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現代金融システムの核心:レバレッジ効果

現代の金融システムは、資産を売却し現金化するような直接的な流動化を経なくても、その資産の価値を活用することができるように構築されています。この仕組みにより、不動産や株などの資産を所有する個人や企業は、それらを現金化せずに、金融機関のサービスをもとにその価値を有効活用できるようになっています。

金融機関は個人や企業の資産を担保にお金を貸し出し、これにより利子を得ます。一方、資産を流動化した側はそのお金を活かして他の投資機会を模索できます。他者や金融機関から借りた資本を用いて投資を行うこのプロセスを「レバレッジ効果」と呼び、他人資本を活用して利益を上げることを意味しています。

レバレッジ効果の最も典型的な実行モデルとして挙げられるのが、不動産市場です。例えば、住宅所有者は自分の家を担保にしてローンを組み、これを様々な投資先や消費先に有効に活用できます。こうした担保ローンは、住宅所有者にとって資本の効率性を、金融機関にとっては追加の収益源をもたらす手段として利用されます。

ビットコインの制約と新しい技術的挑戦

ビットコインの金融的な立ち位置および課題

金融商品は、価値ある資産を最大限に活用する方向に進化してきました。金や石油などの原材料に対する先物取引やオプションなどの金融派生商品がその例です。この文脈で、7兆ドル以上もの市場規模を持つビットコインが金融商品として活用が不十分だというのは異例の事態です。

もちろん、WBTC(Wrapped Bitcoin)などの商品がこれを一部緩和していますが、全体のビットコイン市場規模のわずか1%しかがWBTCとして活用されておらず、その比率は依然としてわずかです。特に、イーサリアムはその2兆ドルの市場規模の中で約200億ドルが分散型金融(DeFi)に使用されていることを考えると、ビットコインのこれらの制約は一段と顕著です。

この問題の本質を理解するためには、まずビットコインの特性を理解する必要があります。2009年、ビットコインネットワークの最初のブロックであるジェネシスブロックが作成されて以来、ビットコインは一度もハッキングを受けずに持続的にブロックを生成し、安定性を証明してきました。しかし、分散性と安定性のために、ビットコインネットワークは複雑な機能を制限し、単純な機能のみを実装できるように設計されました。これにより、複雑な取引を可能にするスマートコントラクトの実行能力や大規模な取引に対する処理能力は制限され、ビットコインの潜在力を完全に発揮することが難しくなっています。

それにもかかわらず、ビットコインの高い潜在力を引き出す試みが何度もありました。前述のように、(1) WBTCのように、分散型金融のエコシステムが発展した他のチェーン上にビットコインと同等の価値を持つトークンを発行する「ラッピング」方法、そして (2) ビットコインに直接データを保存する方法である「Ordinals」、そして 「BRC-20」のようなビットコインベースのトークンを生成する方法が代表的な例です。特にOrdinals(オーディナルス)やBRC-20の方法は最近注目を集めていて、ビットコインのユーティリティ関する新しい指針を提示しました。

オーディナルズ(Ordinals)とBRC-20の登場

ビットコインを活用するための様々な技術的な試みとアイデアが出されてきましたが、ほとんどは初期の実験段階を超えて実用化には至っていませんでした。しかし、2023年1月に登場した「オーディナルズ」は初めての実用化の成功例を確立しました。オーディナルズの技術は、ビットコインの最小単位である「サトシ」にデータを刻んで、画像やテキストなどの情報をブロックチェーンの台帳に記録する手法です。このデータはオンチェーン上に記録されるため、改ざんが不可能であり、ビットコインの安全性を活かしたデータ保存手法として認識されています。

BRC-20規格はオーディナルズの概念を拡張し、トークン関連の情報を含むテキストをビットコインのスクリプトに埋め込んで、サトシに情報を保存する手法を指します。このテキスト情報を基に、トークンのミント、配布、送信が可能になり、ビットコインベースの代替性トークン(Fungible Token)のエコシステムが生まれました。

ただし、BRC-20はビットコインネットワークで直接実行されるスクリプトではなく、ビットコインのマイナーが有効性を直接検証するわけではありません。そのため、BRC-20トークンはただの「テキスト」と見なされるところでしたが、これがビットコインネットワークに前例のない活性化をもたらしました。

ブロック報酬対ビットコイントランザクション手数料(出典:Hashrateindex

BRC-20関連のオンチェーン活動が最も活発だった時期には、トランザクション手数料の総額がブロック生成による$BTC報酬を上回ることもあり、同時に何十万ものトランザクションがメンプールに待機するなど、ビットコインネットワークは非常に混雑しました。

2023年5月には、BRC-20の市場価値が約10億ドルに達し、2023年10月現在で3500万回のインスクリプションがネットワーク上で発生しました。ここで「インスクリプション」とは、ビットコインの最小単位であるサトシにデータを刻むプロセスを指しますBRC-20の創設者domo氏が「面白い実験」と表現するほど最初は単純なアイデアから出発したことに対し、上記の結果はビットコインのユーティリティの拡張可能性をはっきり示し、ビットコイン生態系への高い関心の指標と見なせます。

こうした高まる関心にもかかわらず、ビットコインネットワークを使用し、ビットコインの資産価値を有効に活用するにはいくつかの重要な課題が存在します。たとえば、第三者が発行するWrapped Bitcoinは、その価値が発行機関の「信頼(Trust)」に大きく依存します。また、BRC-20トークンシステムは一般のユーザーが容易にアクセスすることはまだ難しく、技術的理解が求められる側面があります。

こうした課題に対処し、ビットコインのユーティリティを普及的に活用できるようにさせるため生まれたプロジェクトが「アレックス(ALEX)」となります。

ALEXは第三者の介入を排除し、ビットコインの安定性を最大限に引き出しながら、プログラミング機能を追加します。これにより、ALEXはビットコイン関連の金融インフラを統合するレイヤーとしての役割を果たし、ユーザーに最高の体験を提供することを目指しています。

「ALEX 」ビットコインのユーティリティ拡大のためのインフラを構築するプロジェクト

出展:ALEX 公式ブログ

ALEXは、ユーザーに卓越した体験と高いセキュリティを提供することを目指して、以下の2つの主要な戦略を進めています。

資本的戦略: ビットコインを活用することができる安全な金融インフラの構築

1. Stacks(スタックス)をメインチェーンとして採用

ALEXが採用しているStacksは、ビットコインのLayer 2 ソリューションとしてDeFiやNFTなどのプログラム可能なコントラクトをビットコインネットワーク上で実装できるようにします。

ALEXはStacksをメインチェーンとして選ぶことで、ビットコインネットワークの安定性と分散性を保ちつつ、プログラミング機能を利用できるようになります。これにより、ビットコインをより多様で高い利用価値のあるプラットフォームに進化させ、ユーザーはビットコインベースのdAppを使用して様々な価値を生み出すことができます。

2. sBTCを活用した金融プラットフォームの構築

Stacksの大規模なアップグレード、「Nakamoto Release(ナカモトリリース)」を機に、ALEXはビットコイン資産を活用した金融商品を開発する計画です。

ナカモトリリースでは、ビットコインのブロックの読み書きができるStacksの特徴を活かして、中央集権者に頼らず、分散型コンセンサスかつノンカストディアルに基づいたネイティブBTCと1:1でペッグ In / Outが可能な「sBTC」を発行できるようになります。これにより、ビットコインネットワークによって100%保護されたペッグドBTCをスマートコントラクトに使用することができるようになります。

このとこからALEXはsBTCを使用したレンディング、イールドファーミング、派生商品など、金融インフラの基本的な要素を提供するプラットフォームを構築する予定です。

さらにALEXは上記のプラットフォームの構築に先立ち、BitcoinレイヤーとStacksレイヤーを効果的に結びつけ、ユーザーに最適な環境を提供するために複数のプロトコルの開発を行っています。現在イーサリアム/BNBとStacksを接続するALEX ブリッジは既にメインネットに展開されいて、将来的にはビットコイン基盤の資産とStacksを繋ぐブリッジも開発し、ビットコインレイヤー1とレイヤー2の間のコミュニケーションが円滑に行える環境を整える予定です。

3. ビットコインベース・アセットのための分散型ローンチパッド

ALEXはビットコイン・エコシステムを活性化するために分散型のローンチパッドを運営しています。このプラットフォームは、新しいBRC-20プロジェクトに初期資金調達、コミュニティ構築、およびプロジェクトのプロモーションの機会を提供し、それらの成長をサポートしています。

ローンチパッドの応募はBRC-20に関連するすべてのプロジェクトに開かれていますが、最終的にローンチパッドに選ばれるプロジェクトはALEXのガバナンストークン保有者の投票によって決まります。

4. ビットコイン・ビルダー向けの支援ファンドの設立

ビットコイン・エコシステムは非常に初期の段階にあり、将来の成長可能性は無限大ですが、初期参入の壁も高いため、「Bitcoin Lab Fund」と呼ばれる支援ファンドを設立し、ビットコインビルダーに財務的サポートだけでなく、ALEXが持つさまざまなツールや技術などの開発およびインフラ全般を提供します。特にALEXはStacksレイヤーでの開発経験に基づき、他のプロジェクトが簡単に開発できるように、ALEXのAPIとソフトウェア開発キット(SDK)を提供しています。

技術的戦略: 最高のユーザー体験を提供するビットコインベースのアプリケーションの構築

1. 史上初の「オーダーブック型BRC-20 DEX」のローンチ

ALEXは、DEX(Decentralized exchange、分散型取引所)でトークンの交換が行われるときに使用されるAMM(Automated Market Maker、自動マーケットメーカー)手法に続き、BRC-20向けのオーダーブック型DEXである「B20」をローンチしました。

BRC-20のミントや転送などの操作を行うには、ビットコインネットワークのオンチェーン構造とスクリプトに対する深い理解が必要で、一般のユーザーにとっては大きな参入障壁が形成され、多くの人々はこの複雑さのために中央集権的な取引所に頼る必要がありました。

しかし、ALEXが制作したB20 DEXを使用することで、ユーザーは中央集権型取引所と似たオーダーブックのUIを用いてBRC-20の取引ができるようになりました。 B20で発生するすべての取引は、ロールアップ(Rollup)テクノロジーを利用してビットコインチェーン上で安全に決済されます。

2. BRC-20「オンチェーン・インデクサー」の開発

BRC-20トークンは、我々が一般に知っているERC-20トークンのように、スマートコントラクトによってデプロイされるものではありません。そして、先述の通り、ビットコインに内包されたトークン情報のファイルが実行されるわけではなく、ビットコインのマイナーによって検証されません。

すなわち、BRC-20はビットコインネットワーク上の単なるテキストファイルを基にした一種のバーチャルトークンです。ビットコインという最も安全なチェーンに保存されたこのテキストファイルは、改ざんの危険性がないという高いセキュリティを有していますが、このテキストを通じて生成されたトークンの発行や流通の過程は外部のインデクサーに依存しています。

現在のインデクサーは、BRC-20 および Ordinals の代表的なウォレットプラットフォームである Unisat など、中央集権的な主体によって管理され、巨大なデータベースが構築されています。最も分散化されたビットコインを活用するという利点を生かすBRC-20エコシステムが中央集権的な主体に頼っているのは矛盾していると言えるでしょう。

このような中央集権的なインデクサーは、データの歪みを引き起こす可能性があります。実際、インデクサー間のオーディナルスのバージョンの違いにより、各マーケットプレイスが異なるインスクリプション番号をインデクシングする問題が発生し、これによりユーザーは二重支払いの危険にさらされました。これにより、BRC-20エコシステムの信頼性が大幅に低下し、ビットコイン・エコシステムが成長するために解決しなければならない課題として浮かび上がりました。

出展:ALEX 公式ブログ

ALEXはこの課題に対処するために、BRC-20トークン標準の創設者であるDomoと協力し、ビットコインの状態を直接読み取ることのできるStacksレイヤーを活用して、分散型の「オンチェーン・インデクサー」を開発しています。これにより、ビットコインベースのトークンが特定のエンティティに依存することなく、完全にビットコインの力で保護されるトークンエコシステムが構築されます。

$ALEXの役割と活用方法

$ALEXトークンはALEXのガバナンストークンです。このトークンを保有することで、ALEXのガバナンスフォーラムで提案された事項に対する承認権を行使できます。

$ALEXトークンはALEXプラットフォームへの流動性トークンおよび$ALEXのステーカーへの報酬として分配されます。$ALEXの総発行量は10億で、2023年11月時点でマーケットには約6億3,000万以上のトークンが流通しています。

$AutoALEX: 自動再ステーキング用のトークン

ユーザーが$ALEXをステーキングすると、$ALEXを報酬として受け取ることができます。このとき、ALEXが提供するAutoALEX機能を使用すると、$ALEXをクレームして再び預けるプロセスを自動化することで複利効果を享受できます。

$AutoALEXはロックアップする必要はなく、所有しているだけで$ALEXを複利でステーキングしたときの価値に収束するトークンです。例えば、最初に$AutoALEXが発売されたとき、$AutoALEXと$ALEXの価値は1:1ですが、時間の経過とともに$AutoALEXの価値は複利効果の価値に応じて増加します。ALEXの流動性プールには、ALEX財団が$AutoALEX-$ALEXペアをサポートするソフトペッグを提供しており、ユーザーは必要な時に資産を流動化することができます。

$Apower: ローンチパッドへの入場券

APowerは、ALEXの分散型ローンチパッドへの参加に利用されるトークンで、取引および譲渡ができない特性を備えています。このトークンはALEXエコシステムの貢献者に配布され、以下の役割を通じて、ALEXとローンチするプロジェクト、そしてALEXユーザーがお互いに連携することをサポートします。

  • ALEXステーキング参加者への報酬

ALEXプールに流動性を提供して得られるLPトークンまたは$ALEXをステーキングしたユーザーは、$ALEXの報酬に加えてApowerを追加で受け取ることができます。ビットコイン・エコシステムが成長するにつれて、優れたプロジェクトがALEXローンチパッドに多く参加すれば、Apowerの需要が増し、ALEXプロトコルの流動性が向上する可能性があります。

  • 分散型ローンチパッドへの潜在的な参加者の確保

Apowerは取引および譲渡ができない上、ALEXローンチパッドへの参加が限定的であるため、所有者たちにとってALEXローンチパッドへの積極的な参加を検討させます。これは、ビットコインベースのプロジェクトがALEXプラットフォームを介してローンチするモチベーションを提供します。

  • 追加のユーザーを確保するためのサポート資金

Apowerを利用してALEX自体のプロダクトを活性化することができます。実際、ALEXローンチパッドを進行した$ORDDの場合、ALEXブリッジを使用するユーザーに対してApowerを提供するイベントを開催し、その期間中にブリッジを介してStacksチェーンに移行した総額が約20%増加しました。

担保ローン機能を活用した資本効率の最大化

StacksベースのDeFiプロトコルであるArkadiko Financeは、暗号通貨を担保にして1ドルにペッグされた$USDAをミントし、ユーザーに貸し出す機能を提供しています。

ALEXユーザーはArkadiko Financeに$AutoALEXを担保にしてステーブルコイン$USDAをミントし、追加の投資機会を得ることができます。特に、ALEXはArkadiko Financeと連携し、$ALEX/$USDAプールに流動性を提供するユーザーに$ALEXだけでなく、Arkadiko Financeのガバナンストークンである$DIKOも報酬として支払っています。このプロセスにより、$ALEXホルダーは$AutoALEXに変換して複利効果による利息を受け取り、この$AutoALEXを担保にしてステーブルコインを発行することで資本効率を最大化できます。

結言

ALEXは、ビットコインのインフラに特化した金融レイヤーとして、ビットコインの高い資本価値と堅牢なネットワークセキュリティを活かしてエコシステムを構築しています。このため、ALEXはビットコイン支援ファンドを立ち上げ、ビットコインのインフラを整備するとともに、史上初のオーダーブックベースのBRC-20 DEXEVMベースのチェーンとStacksチェーンをつなぐブリッジ、BRC-20の安全なトランザクションを可能にするための不可欠なオンチェーンインデクサーなどを開発につとめています。

具体的には、ALEXが持つ様々なインフラを用いることで、ビットコイン開発者は資金調達または技術的なサポートを受け、ビットコイン開発のハードルを低減できるようになります。これにより、ユーザーは迅速かつ安全にビットコインベースのdAppを利用できるようになります。

ただし、まだALEXで直接ネイティブBTCを活用する機能は正式にリリースされておらず、また流動性も十分ではありません。それでもALEXは提示したロードマップにしっかりと沿って進んでおり、今後、$sBTCを活用したビットコイン金融商品などが成功的にリリースされれば、ビットコイン・エコシステムを牽引する中核プロトコルとして大いに期待されます。

<参考文献>