この記事は2023年12月1日にNorth Rock Digitalが執筆した「Stacks Thesis Update」をDeSpreadが翻訳・校正したものです。本記事の内容は暗号資産や証券、その他の金融商品の売買や引受けを勧誘する目的はありません

最近Stacksにおける主なロードマップが進むに連れて、2023年2月に私たちが提出したStacks Thesisはさらに一層明確になってきました。

全体的に、ビットコインのブロックスペースに対する需要が強まるなか、Stacksに基づいて開発されているプロダクトへの需要も着実に広がっています。そして、Stacksはより精密なビットコインベースのユーティリティを提供し、「真のビットコインレイヤー2」への変革を目指しています。

なお、Stacksの開発チームは4月に予定されているビットコイン半減期の前にナカモトアップグレードが行われるよう計画しています。このような前向きな変化が予告されているものの、常に激動の市場ノイズによりSTXへの関心は一時的に減少しています。ただし、私たちはその論拠(Thesis)に対する確信はさらに強まり、Stacksが次の主要なマイルストーンの達成を目前としていることにあたって特別な機会が残されていると考えています。

現在、ビットコインの視点から見るとブロックスペースに対する需要は堅調で、今年ビットコインネットワークの平均手数料は約50倍に増加しました(イーサリアムの場合は2倍)。同時にオーディナルス(Ordinals)の進展も続き、ネットワーク上でBTCに対する単に保有すること以外の需要も増加しています。さらに、ビットコインの安定した価格動向とアメリカからの現物Bitcoin ETFの承認見込みによる規制の明確化から、ビットコインは世界的な資産および価値の保存手段(Store of Value; SOV)として確立し、そのマーケットシェアを拡大しました。

このような様々な要因が絡み合い、Stacksで開発中のプロダクトに対する需要、つまり柔軟かつ安全なビットコインベースの環境からの高次元のアプリケーションが展開される需要も増加しています。このような需要に応えて、Stacksは予定している技術的な進歩に沿ってビットコインにおける真のレイヤー2への転換を長期的なビジョンとしています。

ビットコインネットワーク上のトランザクション数

BRC-20およびオーディナルスからのトランザクション数の復活

ビットコインのドミナンスの拡大

ここ数か月、Stacksは主にナカモトリリースに注力しており、Stacksの開発者リソースの大半をそちらに向けてきましたが、この事実はあまり多くの人に知られていませんでした。最近、Stacksの開発チームは「モカモト(Mochamoto)」と呼ばれる、ナカモトのノードとRPCエンドポイントを実装した重要なマイルストーンを達成し、これによりビットコインの半減期スケジュールに合わせて4月までにナカモトメインネットをリリースする基盤を整えました。私たちは今回のアップグレードが多くの変化をもたらす強力な触媒となると期待しています。

現在のStacksはビットコインレイヤー1のブロック生成時間に従うため、ネットワークの速度がやや遅く、セキュリティの問題のため Bridged BTCをサポートしていません。しかし、ナカモトアップグレードが進むと、Stacksのブロック生成時間は(現在の約10〜15分のブロック生成時間に比べて)「5秒」へと大幅に短縮されます。さらに、Stacksのコンセンサスメカニズムと統合された安全かつ効率的なラップドBTC、「sBTC」を基本的にサポートするようになります。

Stacksのエコシステムは、現在の技術的な制約にもかかわらず、多くの優れたチームによって弾力的なエコシステムを維持しています。今後のsBTCのリリースとナカモトアップグレードがネットワークにどのような有意味な変化をもたらし、それに伴ってどのような進展があるかを楽しみにしています。また、Stacksはこのアップグレード後、BTCのハッシュパワーを100%で維持し、よりビットコインレイヤー2に近い形になるでしょう。

Stacksエコシステムの概要

これから発表される様々なニュースはSTXへの関心を大いに高めるでしょう。

まず最初に、来年1月と予想される、現物ビットコインETFの承認があります。これにより、世界の主な金融機関が牽引するビットコインへの大きな注目が期待されます。もちろん、直接に影響を受けるのはBTCでしょうが、STXなどのビットコインエコシステムへの関心も高まるでしょう。

次に、最近Stacksはシンガポールの「Spartan Capital」と韓国の「DeSpread」と提携し、世界中に進出しています。これにより、2024年第1四半期には韓国、シンガポール、香港、ドバイ地域を中心にビットコインレイヤー2の認知度向上のためのマーケティングキャンペーンが行われる予定です。

さらに、Stacksは来年3月のナカモトアップグレードに向けて、重要なマイルストーンを発表する予定で、1月までに第二弾のナカモトテストネットをリリースする見込みです。関連するニュースが発表されると、ますます多くの人々の注目を集められると考えます。

最後に、最近導入されたBitVMなどの新しいビットコインレイヤー1のためのツールは、Stacksが目指す真のビットコインレイヤー2のビジョンに一歩近づくことをサポートします。以前は、ビットコインへある機能をサポートさせるためにビットコインレイヤー1を直接変更する必要がありましたが(実現は極めて難しい)、BitVMを使用すると、レイヤー1への変更は不要になります。

ナカモトに関する中核マイルストーン

「STX vs BTC」および「STX vs 他のL1/L2」などエコシステム間の相対的な評価を行うとSTXは現在、非常に魅力的な水準にあることがわかります。さらに4月までに、Stacksはおそらくナカモトアップグレードを最終的に完了し、史上初の完全に機能するBTC建てエコシステムを提供することになると考えます。

同時に、BTCの半減期に近づいている中で、StacksエコシステムはビットコインL2としての認識を高める真っ最中です。これにより、STXが他の資産と比較してその評価割引を縮小させる有利な環境が整ったと考えます。現在、STXはBTCのFDVの0.15%で取引されていますが、イーサリアムL2はETHのFDVの10%までディスカウントされています。

ディスカウントそのものはもちろん理に適っているのですが、現在のディスカウントの幅は、ナカモトアップグレードによってSTXの機能が向上し、真のビットコインL2に進化するにつれてのSTXの潜在的な上昇を示唆しています。

STX vs BTC vs L1/L2

Stacksエコシステムにおいて今後どのようなアプリケーションが登場するか予測することは難しいですが、期待されるいくつかの注目すべき事例があります。まず、具体的なケースを紹介する前に、いくつかの重要なポイントが挙げられます。今後説明するアプリケーションの多くは、現在(他のチェーン上で)異なる形式で既に実装されていますが、一般的には広く使用されておらず、これらがStacksエコに登場すれば、次の理由からより大きな成功を収めることが期待されます。

まず最初の理由は、コミュニティです。STXは強力なBTC中心のコミュニティ志向を持ち、ここに参加するユーザーは既にBTCを用いた実験に対して非常に前向きな気概を持っています。そうでなければ、初めからStacksエコシステムに参加していなかったでしょう。似たような事例として、ETHチェーンにもwBTCが存在しますが、ETH中心のコミュニティとは対照的な姿を見せています。

第二はインセンティブです。Stacksエコシステムは初期段階でBTCをアプリケーションに引き込むため、市場参加者は強力なインセンティブを提供される計画です。そのインセンティブに関するプロポザルの1つは、StacksへブリッジされたすべてのBTCに対してベース収益率を提供するもので、初期の10億ドルの合計価値に対して2〜3%の収益率を提供できるだけの十分な資本が用意されています。

第三に、ナカモトのアップグレードにより、Stacksはビットコインからのトランザクションをこれまで通りに決済できるだけでなく、BTC reorgに対する完全な耐性を備えるようになります。最終的にはStacksが真のレイヤー2となり、BTCコミュニティがSTXエコシステム内のさらなるアプリケーションを探索できるよう、追加のインセンティブが提供される計画です。

ナカモトのアップグレード後、ネットワーク速度の改善と(Fast Blocks)とsBTCが活性化されると、STX上でBTCベースの高性能NFTマーケットプレイスが登場する可能性もあります。これはオーディナルスの取引をより効率的にし、オリジナルNFTコレクションの誕生を促進することも可能でしょう。

また、sBTCペッグの概念を拡張し、ビットコインレイヤー1にオーディナルスをロックし、Stacksレイヤー2で使用できるようにすることで、オーディナルス取引体験をより速く、手頃な価格で、プログラミング可能な方法に切り替えることができます。

レンディングなどの伝統的なDeFiアプリケーション(例:Zestチームから既にSTX上にレンディングサービスが開発中)にもsBTCが活用される可能性が考えられます。sBTCペアを基にしたさまざまなサブトークンに関する取引も活発化し、ALEXは既にその基盤を構築しています。これら多様なアプリケーションは、自ら収益を生み出しつつ、多くの人々にサービスを提供することができるポテンシャルを持ちます。Stacksエコシステムから新しいユーティリティが提供される未来はそう遠くありません。